夏の浜辺でスナガニを追いかけて遊んだ経験をお持ちの方も多
いことでしょう。砂浜に巣穴を掘って生活するスナガニは警戒心
が強く、人の気配を感ずると素早く穴に逃げ込みます。その動き
があまりにも早いので人は追いつけず、穴の上から白い砂を流し
込んでそれを頼りに掘り進んでいくのです。そうしてつかまえた
スナガニを手に子どもらは英雄気取りでした。しかし、東北以南
の海浜に生息するスナガニは、砂浜の浸食や護岸工事が影響して
次第に生活の場を奪われ、その数も減少しています。鳥取県では、
スナガニを海岸の生物多様性をはかる指標生物にしようと、その
生態や個体数調査に取り組んでいます。
ハマボウフウという海浜植物をご存じでしょうか。濃い緑の葉
と夏に咲く白い小花、深く伸びる根が特徴のこの植物は、日本の
どこの海岸にも生育していたセリ科の多年草で、五月の浜辺で新
芽を摘む風景は季節の風物詩ともなっていました。海浜植物には
ハマニンニクやコウボウムギ、ハマヒルガオ、ハマニガナなど、
たくさんの種類がありますが、それらは“砂草”と呼ばれ、砂浜
に深く長く根を伸ばして砂の飛散を防ぐはたらきをしています。
これまで我が国の海岸には、防災林整備のためのクロマツの苗が
たくさん植えられましたが、砂草たちはマツ苗を砂嵐から守ると
いう大切な役目も果たしていたのです。
スナガニやハマボウフウは、宮城県では絶滅危惧種のひとつに
挙げられています。わたしたちが手を差し伸べてやらないと種が
途絶えてしまう生き物についても、一緒に考えてみませんか。